地域新電力で毎年2億円電気代上昇!?
梅田市長が設立を目指す久喜市版「地域新電力」。
少し前まで、地域新電力は多くの官民が設立するなど「ブーム」とも言える状況にありました。
しかし、世界的な燃料費高騰の煽りを受け、様相は一転。
地域新電力の事業リスクが顕在化し。倒産や事業停止が続出しています。
そんな中、久喜市が今から地域新電力を設立するのは大きなリスクであると考えます。
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電気代は2億円上がる
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久喜市は地域新電力の設立を目指すにあたって、委託による「事業可能性調査」を実施しました。
↓久喜市地域新電力事業可能性調査↓
https://www.city.kuki.lg.jp/shisei/jigyo/kankyo/pps_partner.files/seikahokokusho.pdf
↓久喜市地域新電力事業可能性調査↓
https://www.city.kuki.lg.jp/shisei/jigyo/kankyo/pps_partner.files/seikahokokusho.pdf
この調査レポートでも
•今後、化石燃料価格が上昇する予測もある
•市場価格高騰時には赤字に陥る可能性がある
と言及があります。
市場価格(化石燃料価格)高騰時に地域新電力の事業継続が困難であることは、調査レポートからも事例からも明らかです。
それでも地域新電力を設立し、事業を継続するならば、
市場価格高騰時にも耐えうる料金設定にすることが必須となります。
尚、料金設定や市場価格を12のケースに分けて行ったシミレーションにおいては、たった1ケースだけ市場価格高騰時でも事業が成立するケースが存在していました。
ただ、このケースでは、地域新電力が販売する料金の設定を「東電より5%割引」としています。
現在久喜市は、入札により小売り事業者と契約し、電力を東電より約40%安く購入していますので、
地域新電力を設立し存続させるためには、
久喜市は今より相当高値で電気を買う必要があることになります。
具体的には
現状→東電より約40%OFF
地域新電力→東電より約5%OFF
でしか、地域新電力の事業は成立しないということです。
詳しい影響額を議会で確認したところ、
現状よりも約「2億円」電気代が上がる可能性があると答弁がありました。
※厳密にはこの試算も地域新電力の価格を「東電より10%引き」で計算しているため、実際の負担増は「2億円以上」と想定されます。
しかもこの2億円(経費増)は「毎年」です。
市場価格によって変動はありますが、地域新電力に固執することで、本来必要が無い億単位の経費が毎年発生するわけです。
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地域新電力が黒字であれば良いのか?
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市は、地域新電力の実現可能性を見る指標として「営業利益」を挙げています。
営業利益も大切ですが、それだけで事業可能性は計れません。
久喜市と、久喜市が設立する地域新電力は、民間で言えば親会社と、事業子会社の関係にあたります。
親会社が子会社から電力を購入するわけですから、子会社を黒字にしようと思えば子会社は「高値で売ればいいだけ」です。
しかしそのような黒字は、親会社との連結で考えると、無意味であることは言うまでもありません。
今のところ、久喜市(親会社)と地域新電力(子会社)を連結させた財政比較は出てきていません。
久喜市として電気代が2億円増えることを考えると、連結で久喜市が財政的にプラスになることは無いと言えるでしょう。
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ごみ発電があっても高騰リスクは消えない
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久喜市の地域新電力は、新たに整備される「ごみ処理施設」によるごみ発電を活用する方針です。
自前の発電機能を持っていることは、たしかに地域新電力にとってはメリットです。
しかし、地域新電力などの電気小売事業者には、電気事業法により「計画値同時同量制度」が義務付けられています。
参考 電力ガス取引監視等委員会
要するに、需要と供給を30分毎に一致させる必要があり、電力を余らせても、不足させてもペナルティが生じます。
そして、一日の電力需要には、図のように大きな波(需要ロードカーブ)があります。
下図の青線が需要の波です。
この需要カーブに供給電力をフィットさせること=「計画地同時同量制度」を守ること、です。
一方、太陽光発電や、ゴミ処理発電は調整力がありません。
そのため、ソーラー発電やごみ処理発電は「ベースロード電源」もくしは「ミドル電源」と位置づけられるのが一般的です。
需要ロードカーブの波の大きなところ(ピーク時)に対応するためには、JEPX電源(市場価格に左右される卸電力)が欠かせないのです。
出典 資源エネルギー庁
つまり、いくらごみ処理発電で、大きな電力を確保出来るからと言って、それだけで需要ロードカーブにフィットさせることは不可能だし、
JEPX電源に依存することは避けられない=市場価格高騰の影響は避けられない、ということです。
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電力の地産地消とは?
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地域新電力のメリットとして「地産地消」をよく聞きます。
私はこの考えに懐疑的です。
食べ物の地産地消であれば、輸送コストの削減や、輸送に係る環境負荷の軽減といった意味で理解はできますが電気の特長は「瞬時に、遠くまで」届くことです。送電網もほぼ完成しています。
そういった中、スケールメリットを放棄してまで、電力を地産地消することに意味があるとは思えません。
また、食べ物と違って「加工」などの「過程」が無いので、地域内で循環するメリットも不明です。
地域内のクリーンエネルギーを積極的に買い取ることで、環境負荷の軽減が図られるのは、おっしゃる通りと思いますが、久喜市が地域新電力として買い取らなければ、その目的が実現できないとも思えません。
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2億円あったら出来ること
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久喜市議会では今、給食費無償化の議論が活発になっています。
私は給食費を段階的に無償にしていくべきと思いますが、無償化に反対する議員が理由に挙げるのは「毎年の財政負担」です。
(豪華ごみ処理場や、東鷲宮立体通路など、ムダの象徴のような事業に賛成していた方々が、今さら「財政」を懸念するのは、納得がいきませんが。。。)
久喜市の小中学生の給食を無償化した場合に必要なのは、5.5憶。
中学生の給食を無償化するのに必要なのは、約2億円です。
地域新電力のために、これから毎年電気代を2億円増やす余裕があるならば、
中学生の給食費を無償にできるのです!
よっぽど市民サービスの向上であるように思います。
地域新電力は、このあと事業パートナーを選定し、計画が具体化していきます。
久喜市全体にとって、損失にならないよう引き続きチェックして参ります。
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